自閉症児の育児に携わる人の必読書
この本は自閉症の東田直樹さんが12歳の時に書いた本で母親である東田美紀さんとの共同著書になっています。
東田直樹さんのパートは自閉症ではない人たちが自閉症の人に抱くであろう行動（目をみない、うごきまわる、同じ言葉を繰り返す等）の理由を東田直樹さんの言葉で説明しています。また、自閉症の人の記憶や時間の感覚も説明されています。
東田美紀さんのパートは直樹さんが生まれてから、幼少期どのような子どもだったのか、その成長の過程や、小学校でどのようにお子さんである直樹さんを支援したのかを説明しています。
 | この地球にすんでいる僕の仲間達へ 12才の僕が知っている自閉の世界 [ 東田直樹 ] 価格:2090円 |
前書きより抜粋です。
東田直樹さん
『この本を出そうと思ったきっかけは、僕と同じような障害を持っている子どもの気持ちを、少しでもみんなに分かって欲しかったからです。』
東田美紀さん
『私たちがもう少し彼らの事を知ってあげることが出来たなら、自閉症の人たちもこの地球に生まれて良かったと、思えるような社会になるでしょう。』
東田美紀さんのパート
『１歳まで』『1歳から3歳位まで』『３歳から幼稚園まで』『幼稚園から小学校入学まで』『小学校時代』と期間を区切ってそのころの直樹さんの様子や子育ての悩み、工夫を書かれています。
東田直樹さんは1992年生まれなので、30年ほど前の自閉症児の子育て環境も垣間見え、2020年代の児童発達支援制度が30年間で変わってきている事もこの本から読み取ることが出来ます。
一方で、児童発達支援が30年で進化しても、自閉症の子供の育児の過程で感じる事は2020年代でもかわっていません。
幼稚園の頃の発達検査
気になったところを紹介させていただきます。
『検査を受ければ受けるほど精神状態はおかしくなっていきました。検査が終わっても何かを訴えるようにせつなく泣き続け、こんなにつらい思いをして検査をうけても治療法がないのだったら、検査を受ける意味などないのではと思いたくなる位でした。』（抜粋）
とてもマイルドに抑えられている記述ですが、息子の育児の過程の経験から、2020年代も大きな病院の児童精神科の発達検査は検査される児童への配慮をあまりにも欠く状況が続いているのではないかと思っています。
息子の場合は幼少期の経験から、発達検査は息子も私も嫌悪していますので、どうしても必要な時（今のところ小学校の就学相談のときのみ）のみすることにしています。
みんなが出来る事と同じことを
『結局、直樹には百のことばより１つの事実が、とても重要なことだと思いました。それは、少しでもいいからみんなが出来ることをできるようになることです。』（抜粋）
この記述もまったく同感です。息子は東田直樹さんではありませんが、幼稚園のときに自分で挙手して「運動会の種目のアナウンス」「学芸会の主役3人の１人」をやりました。その時の自信は小学校になっても失うことなく息子の基礎になっていると思っています。
落ち着いてじっとしているのも配慮が無くては難しく、発語も遅かったため、ST（言語療法）をしている息子がやりたいといったことに挑戦させてくれた公立幼稚園に感謝しています。
加配や配慮を断るような私立幼稚園では絶対に得る事の出来なかった経験なのではないかと思っています。
東田直樹さんのパート
『目をつかわないわけ』というセクションは息子の育児にも気づきをくれます。
東田直樹さんの言葉では『人とコミュニケーションをとっている時使うのは、僕たちにとっては両手で違う字を書く位大変な事です。』（抜粋）
良く息子とのやり取りでも「顔をみてあいさつしよう！」「ん？こっち見てないけど聞いているの？」といったコミュニケーションになりがちです。でも、息子を観察していると、全く別の方向を見ていてもきちんと聞いている事は多いんです。
自閉症の人が体を動かすことがどれほど大変なのかという事が頭の隅にあれば、あいさつで顔が合わなくても、説明中にそっぽを向いていても、少し大らかになれるのではないでしょうか。
本にはもちろん映画になった『飛び跳ねる理由』のセクションもありますし、自閉症の子供の典型的な行動の背景が分かり、育児への気付きは多いです。
自閉症の子供の思考が文章になっているなんてすごい本です。いつも思いますが、そんな本が数千円って安いですよね。ぜひ読んでほしい一冊です。
最後に
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